全周囲縁ありのかつらではフロント部分にも縁があるため、生え際は見せないことが前提となる。
それでも見えてしまった場合に目立たなくするため、かつら前縁部に沿ってベース下側に毛を植えることができる。
この毛があると、かつら前縁部を毛で隠すことができるのだ。
一方で、毛がテープや接着剤につきやすくなるという欠点もあり、指定するかどうかは好みが分かれる。
初心者のうちは、指定しない方がお勧めである。
実際、このオプションは、従来のかつらに慣れ親しんだお客さまのご希望によって追加したものである。
特に前縁の毛にこだわらない場合は、ない方が楽である。
この、ベースの下にも毛を植えるという方法は、従来型かつらではごく普通に行われていた。
もともとベースを見せることができないため、いろいろな手を使ってベースを隠していたのだ。
特にベースが厚い従来型かつらでは、風が吹いてフロントの毛が動いたとき、その下のベースが見えやすい。
それを隠すために、ベースの上だけでなく、下にも毛を植える、という技法が考え出された。
現在でも、多くのカツラショップでは、従来型のかつらを注文した時には黙っていても前縁には毛を植えてくれる。
(ただし、中にはこれをオプション扱いとして、別途料金を取るための手段としている店もあるので注意が必要だ)
一方、貼るタイプのかつらでは、全周囲縁ありに限って使われる手法である。
全周囲縁ありの場合は「縁」の端を見せることができないためだ。
他の、「横と後ろに縁あり」とか、「縁なし」ならフロントは縁なしであるから、フロント生え際が見えても大丈夫。
従って前縁に毛を植える必要がない。
なお、前縁に毛を植えるのは、フロント生え際までカバーするカツラに限定される。
つむじだけのかつらでこのオプションは指定してはいけない。
かつら前縁に植えた毛が、横一列の黒い線となって見えるからだ。これはとても不自然である。
「前縁に毛を植える」で製作したが、やっぱりない方が良かった、という場合、
ハサミで切り取ってしまえばよい。
前縁の毛の植えてある1,2ミリ分小さくなるが、そこから破れることもなく、問題なく加工できる。
縁があるところなら、どこを切っても大丈夫なのだ。
これは、端に植えた毛を接着剤でぐしゃぐしゃにしてしまったときの救済策としても使える。
セルフメンテナンスのかつらは、サロンでメンテするかつらと違って切ろうが加工しようが自由である。
かつらを切ることは抵抗が大きいかもしれないが、時として威力を発揮する。ぜひ覚えておきたいテクニックだ。