ヒトの髪は、生え際では量が少なく、後ろに行くに従って髪が増えている。
そこで、この感覚をかつらに再現することで、よりかつらを自然に見せることができる。
特に理由がない限り、生え際の髪を減らす「自然な生え際」を選択しておきたい。
なお、この髪を減らす範囲はわずかであり、これを選択したことでかつら全体が薄く見えるという心配はない。
ただし、意図的に生え際の地肌を見せないときは、このオプションは選択しないほうがよい。
また、かつらの髪はフロントから失われていくので、自然な生え際を指定しない方が、かつらの寿命は延びる。
しかし、その差はわずかであり、気にするほどのものではない。
現実には、かつらの生え際を常に露出するという状況は考えにくい。
風に吹かれて生え際が一瞬見えるだけなら、生え際の密度が減らしてあるかどうかまでは相手に認識できない。
ヒトは、静止したものに対しては細かなところまでよく見えるが、動くものに対しては認識能力が著しく落ちるためである。
その意味では、オールバックにしない限り、このオプションを過度に重視する必要はないと言えよう。
ちなみに、貼るタイプのかつらなら、オールバックにすることも可能である。
しかし、オールバックを維持するためには、生え際装着にミスは許されず、手間と緊張感を強いることになる。
オールバックを積極的に維持する必要がなければ、可能であるとはいえ、あまりお勧めはしない。
とりわけ、オールバックとする理由が「かつら装着前と同じ髪型にしたい」ということであれば、なおさら賛成しない。
同じ髪型を維持すると、小さな変化が見つかりやすくなる。
髪型が変わっていれば、少々の変化は、髪型の変化に紛れて目立たない。
かつらにするのを気に、オールバックをやめるのがもっともお勧めの方法である。
当店でも、時々オールバックに関する質問を受けることがある。
そうした時の回答は、前述通り「不可能ではない。でも維持するのは大変だからお勧めはしていない。」である。
なお、生え際を見せないオールバックという選択肢もある。
かつらのフロントの髪をいったん前にもってきて、それからぐるりと上に回して後ろへ向かわせるのである。
この場合、確かに生え際は見えずにすむが、セットが面倒な上に自然かどうかは微妙である。
やはり当店としては、お勧めしかねるヘアスタイルだ。
全周囲縁ありのかつらの場合、生え際を見せないことが前提であり、縁が見えないように生え際も髪量は減らさない。